土地を買うのでは無く永代使用権を買うブログ:11月30日
あれはわたしが小学3年生の秋、
窓を閉めて寝る季節のことだった…
ママは真夜中9時から10時の間に自分の部屋にこもり、
「決して襖を開けてはいけない」と言った。
わたしはそれに従った。
だけど、それにしても、
一体、ママは何をしているのか?
なぜわたしは見てはいけないのか?
何か秘密でもあるの?…
そのうちだんだん妙な疑惑と不安がのしかかってきた。
もしかして、
ママは「鶴の恩返し」に出てくる鶴ではないか?
隠れて織物を織っているのではないか?
実は「雪女」で、襖を開けたら、
真っ白の風にくるまれ、消えていくのではないか?
わたしは、そんな化け物から生まれたのか?
怖いやん…めちゃ怖くて、泣きそうやん…
こんな秘密を持つなんて、
きっとママはわたしが嫌いなんだ、
実の娘じゃないからだ。
わたしはなんてかわいそうな娘だ。
…泣きたくなって、襖を開けてしまった。
すると、ママはなんと腹筋トレーニングの真っ最中!
「こら、開けたらあかんて言うたやん」
もうすぐトレーニング会で、
ママは、競争に勝つために特訓中なのだった。
「あんたがおったら集中でけへんから、ひとりでやりたかったのに〜、
もうええわ。やめよっ!」
と、食卓に来てお茶を飲んだ。
そこで、べたべたとくっつく、
しけたしょうゆのあられを一つずつ5本の指先につけ、
指をなめずに食べた…
これ、ママとわたしのお気に入りの食べ方。
「いつものことやけど、こうして食べたら、おいしいなぁ〜」
と笑うママ。
で、わたしは5本の指を寄せて、
5つのおかきを同時にくちに入れるという技を極め、
ママの絶賛と大笑いを得たのだった。
こんなことで絶賛してくれるのは実の両親以外あり得ない。
間違いなくわたしはママの娘だ!
すごく嬉しくて、そして、涙がとてもしょっぱかった。