土地を買うのでは無く永代使用権を買うブログ:01月09日
「背中を洗ってくれないか」
と、親父に言われた。
この親父というのは、実は嫁の親父である。
わたくしは一瞬戸惑ったが、
「え?!あっ!はいっ」
と言いながらタオルを構え、親父の背中にあてがった。
初めて親父の背中というものに触れた。
なんか丸っこくて大きくて、何だかゴツゴツしている。
上手に洗ってあげようと思えば思うほどうまくいかない。
タオルがねじれてしまう…
今度は親父がわたくしの背中を洗ってくれるらしい。
わたくしは静かに親父に背を向ける。
親父は、なんていうか、力加減を知らない。
すごく力強くて、体についている必要なものまで
洗い流されてしまいそうな感じ。
思わずわたくしは、身をよじってしまった。
「すまん」親父は申し訳なさそうに、
「息子の背中を洗うのは難しいな」と言った…
わたくしは物心のついたころから、
女手ひとつで育てられてきた。
我が家に親父がいないことを悲しがらなかったのは、
母の育てかたが上手だったからだと思う。
溢れんばかりの愛を注いでくれたので、
わたくしはとても幸せだった。
とは言え
親父のことを思わなかった訳ではない。
ただ、そのときわたくしがイメージするものは
どれも好感の持てないものばかりだった。
無口!ガンコ!厳しい!
正直、「親父は怖い」という印象しかなかった。
そんなわたくしに父ができたのは、
わたくしが結婚をしたからだ。
嫁の親父は、わたくしにとって不思議な存在だった。
格好なんてつけない。不器用だけどまっすぐ。褒められると照れ隠しする。
大きなお世話なことばかりする…
わたくしは、親父というものに対する印象が
まるっきり変わった。