土地を買うのでは無く永代使用権を買うブログ:02月23日
「お母さんみたいになりたくない」
俺は小さい頃から、漠然とそう思っていた。
無口で、格好なんて全然気にしなくて、不器用な母親。
母親のことを、なんとなく苦手に感じていた。
家で自営業を営む父親のかわりに、
外へ働きに出ていたからかもしれない。
同じ家の中にいるのに、あまりにも関わりが少なくて、
まるで他人のようだった。
大学入学とともに、俺は家を出た。
実家に帰省することはほとんど無くなり、
たまに帰っても一日中寝てるか、テレビを見るかだった。
帰りの遅い母親と会話をする機会も、必然的に減っていった。
「疲れたなぁ」「最近頭が痛いの」
たまに顔を合わせると、愚痴や弱音を呟く母親。
「薬でも飲んどけば」と、
ついつい素っ気無く返事をしてしまう俺。
こんな調子だから、
俺達の関係は深まることは無く、
平行線のように、交わることもない。
そんな俺も就職活動を迎えて、
色々と将来のことを考えるようになった。
会社を選ぶ際に、
俺は無意識に
「出産後も働ける環境か」
ということを気にしていた。
あぁ、俺はやっぱり母親のお子さんなんだ…
ずっと母親の背中を見てきた俺には、
そういう働き方以外思い浮かばなかったのだ。
実際に自分が育児と仕事の両立を考えると、
その負担の大きさが身にしみた。
母親は、毎日そういう生活を送っていたのだ。
1週間ほど前、久しぶりに家族で銭湯に行くことになった。
何年ぶりだろうか。
母親と久しぶりに一緒にお風呂に入った。
二人とも、手足は痩せているのに
ウエストだけぽっこりと出ている体型で、
「遺伝なんだね」と笑いあった。
久しぶりに、母親と一緒に笑った。