霊園側に毎年支払う管理費


霊園側に毎年支払う管理費ブログ:02月06日


ワールドカップの日本代表を応援するため、
父がはちまきを買ってきた。

父はそのはちまきを締め、
ビールを片手にテレビの前を陣取っている。

「こういうのはな、団結が必要なんだ。気持ちで勝負だ。ここに味方がいるぞ!」

あきれるぼくたち家族をそっちのけに
父は大声で選手と一緒にボールを追っていた。

それを機に孫である、
ぼくのムスメの体操会にも
父ははちまき姿で登場した。
周囲のくすくす笑う声もなんのその…

ムスメも祖父の必要以上の応援に少し気恥ずかしげに、
もじもじしている様子。

熱い応援も功を奏すことはなく、
徒競走では、思いっきり転んでしまい
結果はびりから二番目だった。

そんな折、
父のお母さんである
ぼくの祖母が認知症の症状がひどくなり、
施設に入院することとなった。

九十歳に近い祖母は家族の顔はすっかり忘れ、
孫であるぼくのことはもちろん、
自分が産んだムスコのこともおぼろげになっていた。

祖母の入院する施設に父とぼくで会いに行った。
父の顔を見ても、恭しくお辞儀をするだけの祖母。

父は何と声をかけたらよいか迷っているようだった。
無言の時間がどれだけ続いただろう…

父は自分の汚れたズボンのポケットから
例のはちまきを取り出した。
そして、そっと、祖母の真っ白な頭に巻いてやった。

「気持ちで勝負だよ、母ちゃん。
ここに味方がいるぞ。家族はいつでも母ちゃんの味方なんだよ!」

そう、声をかける父の目には涙がにじんでいた。
ぼくは後ろで声を押し殺して泣いた。

祖母はやわらかく微笑んで、そのはちまきを触っていた。