霊園側に毎年支払う管理費ブログ：01月03日
わたしが生まれて初めて経験したお葬式は、
母のお葬式でした。
母は病院で亡くなりました。
ベッドの横に立つ親父とお姉ちゃん達の後ろに
わたしはぽつんと立っていました。
下のお姉ちゃんが急に大きな声で泣き出したとき、
「あっ、お母さん死んじゃったんだ」と思いました。
わたしは母が入院中、
親父と一緒に何度もお見舞いに行きました。
でも、なかなか病室に入ろうとしませんでした。
わたしはいつも廊下の隅や、
非常階段のおどり場で遊んでいました。
病院のベッドに寝ている母を見るのが
とても恐かったからです。
ある日、わたしは親父に呼ばれ、病室に入っていきました。
母は「リンゴむいてあげようか？」と言いました。
わたしが覚えている母の最後の言葉です。
わたしは「いらない」と言って、
また病室を出て行ってしまいました。
わたしは病院の中を探検しながら、
「大きなお部屋にはたくさんの人がいるのに、
どうしてお母さんは小さいお部屋に一人でいるのかなあ、寂しくないのかなあ」
と思っていました。
今思えば、きっと母は、
淋しかったのだと思います。
わたしが最後までなつかなかったことが…
８月ももうすぐ終わり、
新学期が始まるというのに、
わたしはまだ夏休みの宿題も終わっていません。
それなのに、
黒い服を着た人たちが出たり入ったりと、
家の中はごった返しています。
わたしの居場所がないのには困っていました。
テレビを見ることもできず、部屋の隅で
ちょこんと一人で遊んでいるしかありませんでした。
「かわいそうに、まだ小さいから、お母さんの死がわからないのねぇ…」
という大人達の話し声が聞こえてきました。
わたしは「わかるよ、そんなこと」と
心の中で呟いていました。
